大正期県内小作慣行
《高座郡》
【小作契約の期限】
- 1.期限
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- 〔普通〕
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- 期限を定めず、地主は小作人において不都合なき限り年々継続小作せしむ
- 小作契約をせるものは三年乃至五年を以って期限とす 但し期限内といえども地主入用の節は引戻すを得る契約なるを普通とす
- 〔特別〕
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- 桑園又は開墾地は十年又は十五年を期限とす
- 2.期限内解約の方法並びに賠償
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- 〔普通〕
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- 小作人契約に違反するときは解約す
- 地主地所入用のときは作付前なればそのまま、若し作付後なれば肥料代種子及手間賃の幾分を小作人に賠償して引戻す、小作人事故ありて解約するときは何等の賠償をなさす
- 〔特別〕
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- ―
- 3.期限後小作継続の有無及び通告の時期
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- 〔普通〕
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- 期限前に双方何等の通告なければ小作は更に前約に従い一期間継続す
- 期限満了による解約の通告は春彼岸前又は期限前二ヶ月においてす
- 〔特別〕
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- ―
- 4.小作契約の当事者の一方が死亡の場合における処分
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- 〔普通〕
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- 相続人 権利義務を継承するものと見做す
- 〔特別〕
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- ―
【小作終始期及び小作地返付の方法】
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- 〔普通〕
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- 田畑とも夏作収穫後 冬作仕付前迄の間において借用の際の形状のまま返付す
- 〔特別〕
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- 桑は植込みのまま返地するものあり
【小作料】
- 1.種類及び数量並びに生産高に対する小作料の割合(一反あたり)
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- 〔普通〕
- 田作(一毛作)
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上田 中田 下田 契約上の小作料 米 1.325石 米 1.075石 米 0.825石 最近五ヵ年平均実収小作料 米 1.15石 米 0.95石 米 0.75石 最近五ヵ年平均生産高 米 1.995石 米 1.770石 米 1.320石 実収小作料の生産高に対する割合 58.1% 53.7% 56.8% - 郡内 田の小作米は 8斗乃至 1石 4斗
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- 畑作
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上畑 中畑 下畑 契約上の小作料 金 10円 金 5円 金 2円 最近五ヵ年平均実収小作料 金 10円 金 5円 金 2円 最近五ヵ年平均生産高 金 25円 金 18円 金 11円 実収小作料の生産高に対する割合 40.0% 27.8% 18.2% - 郡内 畑の小作金は 1円40銭乃至 7円50銭、米納は 3斗 5升乃至 1石、大麦は 9斗、大豆は 6斗位
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- 〔特別〕
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- 田において金納するもの稀にあり
- 2.「入れ桝」「口米」「込み米」又は「さし米」の類の有無 及びその量
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- 〔普通〕
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- 〔特別〕
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- ―
- 3.豊凶その他の事変による小作料の増減及び免除
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- イ.増徴の有無及び増徴の場合
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- 〔普通〕
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- 増徴することなし
- 〔特別〕
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- ―
- ロ.免除の有無及び免除の場合
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- 〔普通〕
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- 夏作の一部又は全部 天災のため収穫が皆無となればその地籍に対する小作料を免除す
- 〔特別〕
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- ―
- ハ.軽減の有無及び最近五ヵ年平均軽減歩合
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- 〔普通〕
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- 契約上軽減を約することなきも普通は年柄により軽減すること慣習なり
最多 最少 普通 田作 2割 5分 3分 1割 2分 畑作 金納は殆ど割引なし
品納は少しはあり<- 特に天然の被害甚だしき地は小作人の請求により夏作物収穫の際立毛のまま 地主6分小作人4分の割合で刈り合いを行う
- 〔特別〕
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- ―
- 二.軽減及び免除の決定方法
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- 〔普通〕
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- 一般の軽減歩合は村内の主なる地主協議の上決定し 部分的に特殊の事情あるものは収穫前において小作人の請求により当該地の地主検分の上決定す
- 〔特別〕
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- 地主個々に決定す
- 4.小作奨励米(または金品主食等)の有無及びその額
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- 〔普通〕
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- ―
- 〔特別〕
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- ―
【小作料納入の方法】
- 1.納期
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- 〔普通〕
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- 田は十二月末日限り 畑は八月末日限り
- 〔特別〕
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- 畑小作料は 半期は八月末日限り 半額は十二月末日限り
- 2.納入の場所
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- 〔普通〕
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- 地主の住宅または地主が小作管理を委任せし差配人の住宅
- 〔特別〕
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- ―
- 3.納入の場所迄の運賃の負担
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- 〔普通〕
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- 小作人負担とす
- 〔特別〕
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- ―
- 4.小作米(麦又は大豆など)の検査
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- イ.品質の制限
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- 〔普通〕
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- 籾、粃(しいな)を加えず乾燥充分なるもの
- 精選せる上等米にして一俵 16貫400~500目以上のものとし重量不足のものは相当追徴す
- 〔特別〕
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- ―
- ロ.俵装の制限
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- 〔普通〕
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- 4斗入り一重俵、横縄五ヶ所にて廻り結、口は桟俵を用い菊花縢りとす
- 〔特別〕
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- ―
- ハ.容量または重量及び品質の検査
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- 〔普通〕
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- 小作人立会の上 地主において桝改又は重量改を行
- 〔特別〕
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- 数表中一俵を選び精細に検査を行うことあり
- 5.小作料滞納の処分
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- 〔普通〕
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- 悉皆一年未納又は一部未納三、四年に及べば小作地を取り上く
- 一部米納は翌年 麦の収穫期迄に猶予す 但し月一分の延滞利子を徴す
- 小作証書あるものは保証人に弁納せしむ
- 〔特別〕
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- ―
【小作地に対する制限】
- 1.小作地轉貸
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- 〔普通〕
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- 地主の許可を経て轉貸することを得
- 〔特別〕
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- ―
- 2.小作株の売買
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- 〔普通〕
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- ―
- 〔特別〕
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- ―
- 3.利用上の制限
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- 〔普通〕
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- 地盤に変更を加えること 及び 田を畑として利用し 又は 畑を田として利用すること 桑、果樹等の永年生作物の栽培は地主の承諾を要す
- 〔特別〕
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- 地主は仕付刈入の時期を指定することあり
- 4.地荒しに対する制限及び賠償
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- 〔普通〕
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- 耕転肥培を怠り耕作地を悪変せしめたるものは小作契約を解除す
- 〔特別〕
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- 夏季作付をせざることを禁ず
【小作地に対する負担】
- 1.諸税以外の水利費協議費等一切の諸掛りの負担
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- 〔普通〕
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- 全部地主の負担とす
- 〔特別〕
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- 2.土地改良修繕等に要する経費及び労力の負担並びにそれ等に対する報酬
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- 〔普通〕
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- 直接小作地に係る大工事、大修繕の経費は一切地主の負担とす
- 土地の大工事、大修繕の結果 土地の利用程度進めば 相当小作料を引上げることあり
- 小作人の手においてなすを得る小工事小修繕はそれに要する材料のみ地主支給し小作人労役に従う
- 〔特別〕
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【扶食、種籾、肥料、灌漑用具その他を貸否及びその貸与数量並びに弁済の方法】
- 〔普通〕
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- 〔特別〕
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【田畑売買の際における新旧地主と小作人との関係】
- 〔普通〕
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- 多く前約によるも新地主の任意なり
- 〔特別〕
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【小作敷金及び小作料の前納の有無尾及びその額】
- 〔普通〕
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- 〔特別〕
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- 桑園の小作料を前納せしむる例 僅かにあり
【小作証書の有無、現に用いる小作証書の実例及び契約に要する費用の負担】
- 〔普通〕
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- 小作証書なきを普通とす
- 〔特別〕
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- 近年 証書を取交わすもの増加しけれり
【以上のほか 地主及び小作人間の特定契約事項】
- 〔普通〕
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- 特定契約事項として掲げるべきものなし
- 〔特別〕
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【永小作地面積】
田 | 畑 | 合計 | |
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小作地総面積 | 1,460町 | 6,287町 | 7,747町 |
永小作地面積 | ナシ |
【特殊の小作方法あればその実例の概要】
- 水田開墾の場合には労費の多少により何年間小作料割引又は無料とすることあり
- 畑開墾の場合には根株を無代交付し及び何年間小作料何割引とすることあり
- 切替畑の場合は木の芽を傷害せぬ限り苗木の間に仕付させることあり
【耕地整理か小作慣行に及ぼせる影響の概要】
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〔 参考文献 〕
- 神奈川縣内務部 編 (1916) 『神奈川縣小作慣行調査概要』