相武電鉄資料館

大正期県内小作慣行

《橘樹郡》

【小作契約の期限】

1.期限
〔普通〕
  • 期限を定めず、地主は小作人において不都合なき限り年々継続小作せしむ
〔特別〕

2.期限内解約の方法並びに賠償
〔普通〕
  • 小作人契約に違反するときは解約す
  • 地地主地所入用のときは作付前なればそのまま、若し作付後なれば肥料代種子及手間賃の幾分を小作人に賠償して引戻す、小作人事故ありて解約するときは何等の賠償をなさす
〔特別〕

3.期限後小作継続の有無及び通告の時期
〔普通〕
  • 期限前に双方何等の通告なければ小作は更に前約に従い一期間継続す
〔特別〕

4.小作契約の当事者の一方が死亡の場合における処分
〔普通〕
  • 相続人 権利義務を継承するものと見做す
〔特別〕

【小作終始期及び小作地返付の方法】

〔普通〕
  • 田畑とも夏作収穫後 冬作仕付前迄の間において借用の際の形状のまま返付す
〔特別〕

【小作料】

1.種類及び数量並びに生産高に対する小作料の割合(一反あたり)
〔普通〕
田作(一毛作)
  一毛作 二毛作
  上田 中田 下田
契約上の小作料 米 1.10石 米 0.91石 米 0.66石 米 1.20石
最近五ヵ年平均実収小作料 米 1.01石 米 0.77石 米 0.52石 米 0.91石
最近五ヵ年平均生産高 米 1.91石 米 1.49石 米 1.08石 米 1.88石
実収小作料の生産高に対する割合 58% 61% 61% 45%
  • 郡内 田の小作米は 7斗 5升乃至 1石 2斗
畑作
  上畑 中畑 下畑
契約上の小作料 金 7円 金 6円 金 5円
最近五ヵ年平均実収小作料 金 7円 金 6円 金 5円
最近五ヵ年平均生産高 金 15円55銭 金 13円33銭 金 11円11銭
実収小作料の生産高に対する割合 45% 45% 45%
  • 郡内 畑の小作金は 4円乃至 7円50銭、米納は 2斗 5升乃至 5斗 5升
〔特別〕

2.「入れ桝」「口米」「込み米」又は「さし米」の類の有無 及びその量
〔普通〕
〔特別〕

3.豊凶その他の事変による小作料の増減及び免除
イ.増徴の有無及び増徴の場合
〔普通〕
  • 増徴することなし
〔特別〕
ロ.免除の有無及び免除の場合
〔普通〕
  • 夏作の一部又は全部 天災のため収穫が皆無となればその地籍に対する小作料を免除す
〔特別〕
ハ.軽減の有無及び最近五ヵ年平均軽減歩合
〔普通〕
  • 契約上軽減を約することなきも普通は年柄により軽減すること慣習なり
  最多 最少 普通
田作 2割 5分 5分 1割
畑作
  • 特に天然の被害甚だしき地は小作人の請求により夏作物収穫の際立毛のまま 地主6分小作人4分の割合で刈り合いを行う
〔特別〕
二.軽減及び免除の決定方法
〔普通〕
  • 一般の軽減歩合は村内の主なる地主協議の上決定し 部分的に事情あるものは収穫前において小作人の請求により当該地の地主検分の上決定す
〔特別〕
  • 地主個々に決定す

4.小作奨励米(または金品主食等)の有無及びその額
〔普通〕
〔特別〕
  • 期日迄に皆済の者には酒食を饗することあり

【小作料納入の方法】

1.納期
〔普通〕
  • 田畑とも十二月末日限り
〔特別〕
  • 畑小作料は 半期は八月十四日(盆)限り 半額は十二月末日(暮)限りとすることあり

2.納入の場所
〔普通〕
  • 地主の住宅または地主が小作管理を委任せし差配人の住宅
〔特別〕
  • 米納にありては地主が小作人住宅に就きて徴収す 金納は小作人 地主宅に持参す

3.納入の場所迄の運賃の負担
〔普通〕
  • 小作人負担とす
〔特別〕

4.小作米(麦又は大豆など)の検査
 
イ.品質の制限
〔普通〕
  • 籾、粃(しいな)を加えず乾燥充分なるもの
  • 精選せる上等米にして一俵 16貫300目以上のものとし重量不足のものは相当追徴す
〔特別〕
ロ.俵装の制限
〔普通〕
  • 4斗入り一重俵、横縄五ヶ所にて廻り結、口は桟俵を用い菊花縢りとす
〔特別〕
ハ.容量または重量及び品質の検査
〔普通〕
  • 小作人立会の上 地主において桝改又は重量改を行う
〔特別〕
  • 数表中一俵を選び精細に検査を行うことあり

5.小作料滞納の処分
〔普通〕
  • 悉皆一年未納又は一部未納三、四年に及べば小作地を取り上げて これを他の小作人にあてがえ その延滞小作料は貸借証書をなし 又は地主の損失に帰す
〔特別〕

【小作地に対する制限】

1.小作地轉貸
〔普通〕
  • 地主の許可を経て轉貸することを得
〔特別〕

2.小作株の売買
〔普通〕
〔特別〕

3.利用上の制限
〔普通〕
  • 地盤に変更を加えること 及び 田を畑として利用し 又は 畑を田として利用することを許さず、但し地主の承諾を得るときはこの限りにあらず
  • 桑、果樹等の永年生作物の栽培は地主の承諾を要す
〔特別〕

4.地荒しに対する制限及び賠償
〔普通〕
  • 耕転肥培を怠り耕作地を悪変せしめたるものは小作契約を解除す
〔特別〕

【小作地に対する負担】

1.諸税以外の水利費協議費等一切の諸掛りの負担
〔普通〕
  • 全部地主の負担とす
〔特別〕

2.土地改良修繕等に要する経費及び労力の負担並びにそれ等に対する報酬
〔普通〕
  • 直接小作地に係る大工事、大修繕の経費は一切地主の負担とす
  • 土地の大工事、大修繕の結果 土地の利用程度進めば 相当小作料を引上げることあり
  • 小作人の手においてなすを得る小工事小修繕はそれに要する材料のみ地主支給し小作人労役に従う
〔特別〕

【扶食、種籾、肥料、灌漑用具その他を貸否及びその貸与数量並びに弁済の方法】

〔普通〕
  • 非常に凶歳には小作人の請求により小作料一俵に付き何升と定め扶食を貸与し翌年以降豊作の際返納せしむることあり
〔特別〕
  • 田畑の大小に応じ肥料採取地として草山を添う例 稀にあり

【田畑売買の際における新旧地主と小作人との関係】

〔普通〕
  • 多く前約によるも新地主の任意なり
〔特別〕

【小作敷金及び小作料の前納の有無尾及びその額】

〔普通〕
〔特別〕

【小作証書の有無、現に用いる小作証書の実例及び契約に要する費用の負担】

〔普通〕
〔特別〕

【以上のほか 地主及び小作人間の特定契約事項】

〔普通〕
〔特別〕

【永小作地面積】

  合計
小作地総面積 2,723町 2,027町 4,750町
永小作地面積 ナシ

【特殊の小作方法あればその実例の概要】


【耕地整理か小作慣行に及ぼせる影響の概要】

  • 工事初年は地力不平均なるゆえ小作することを厭うもの多し
  • 整理前は多少の縄延ありたれとも 整理後は正形となりたるゆえ 面積は狭くなりたれとも小作料は旧の如しゆえに割増に當る

〔 参考文献 〕
  • 神奈川縣内務部 編 (1916) 『神奈川縣小作慣行調査概要』
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