道しるべが指す大正時代の川尻
広田の道標
道標のある周辺
古くより境川の水を用いて稲作が行われていた広田地区の東端、北は東京都との都県境にあたる位置に道標はありました。
すぐそばを流れる小松川を越えると、町屋・須南となり古くから集落を形成していましたが、さらに宅地化が進み、広田とは対照的な風景となっています。
この道標があったすぐそばには、原宿地区の生活用水として使われてた原宿用水堀が通っていました。
道標の様子
正面「御成婚記念 東 相原村相原ヲ経テ橋本驛ニ至・・・」
「東」の文字を中心として右に「御成婚」、左に「記念」のと記され、その下に目的となる地名があります。
この道標の通りに進むのであれば、境川に沿った里道を進み、須南と本郷の各地区を横断し隣村・相原村の相原集落（現在の緑区相原）に至ることなります。相原より当麻田、三屋と進み橋本駅へ向かいます。
大正５年（1916年）に開通した津久井新道を経由しないルートであったのでしょう。
左側面
（不明）
南側にあたるを進むと川尻村の中心へと向かうことになります。
しかし、この面を電柱に支えられるようにして建っているため、文字を確認することができません。
右側面「北 境村ヲ経テ横山村及ビ八王子市方・・・」
この先にある境川を渡ると境村（現・町田市）へと入り、町田街道に至ります。
町田街道を東に進むと相原方面から続く府県道と交差し、この府県道を北に進むと横山村（現・八王子市大船町）、さらに八王子市街へと至ります。
裏面「大正十ニ年 川尻村青年・・・」
御成婚記念と表面にはあるものの、この面には結婚の前年の年が刻まれています。関東大震災により昭和天皇の婚礼は延期されていますが、この道標は婚礼の延期が決まる前に建てられたのかもしれません。
設置者は、他の道標と同じ川尻村青年團第七支部だったようすが、この道標のみ一足先に設置されています。
大正10年当時の地形図より
道標が建てられた大正期当時の地形図から見てみると、東へ向かう道すじが幅一間の里道として南東へ伸びていますが、道標が指していたのはこの道すじの途中から東に伸びる半間幅の道だったようです。
道標では行先の確認できなかった南側は、川尻八幡宮付近で浅川口大山街道と合流し旧・川尻村役場へと続きます。
また、北側を見ると、境川の短絡路が掘られていないため橋を渡った先の土地は町田側と地続きとなっています。境川に沿って東西に伸びるのが町田街道となります。