相武電鉄資料館

神奈川県道63号旧道に沿って

地図:県道56号線(愛川町・新旧道対比)

 神奈川県道63号線は、相模原市境の高田橋から厚木市境の才戸橋まで、愛川町東部の中津地域を通る道路ですが、交通量の増加や春日台地区の宅地開発よりルートが変更されています。
 ここでは、旧ルートであった道すじを紹介します。


大塚
写真:三叉路の道路案内標識
 現在の県道63号線と旧道とが分岐するのは、小沢坂を上った先にある内陸工業団地方面と中津方面との三叉路付近となります。

写真:旧道と現道の分岐点  
図表:三叉路付近の現道・旧道の対比
 現在は交差点には含まれていませんが、三叉路の形状を見ると小沢坂から旧道へと続く道すじがあったことが判ります。

写真:大山道道標
 旧道の道すじは、大山参詣の人々が用いた八王子通大山道のルートと一部が重なります。ここにはその大山道の道行きを示す旧い道標が建てられていました。

写真:大塚地区内旧道①  
写真:大塚地区内旧道②
 現在の大塚地区の県道旧道の道すじ。
 このあたりには明確に県道であったことを示すものはありませんでしたが、大きな家屋が点々と目に入ります。

図表:2万5千分の1地形図・昭和29年の大塚付近
 未だこの道が県道に指定されていた昭和30年当時の大塚地区周辺の地形図です。
 中津原台地の縁の辺りに人家が多く集中しており、旧道付近はそれほど人が住んでいなかったことが判ります。

写真:大塚・春日台区界・旧道は左の道へ向かう
 春日台に入る手前で旧道は一旦、大山道と分かれます。写真では直進が大山道、右手の道が県道旧道となります。大山道は湖のまま南東へ進み、内陸工業団地付近で転進していました。

春日台
 春日台地区との境界で旧道は消滅してしまいます。
 昭和38年(1963年)にこの一帯が住宅地として買収、整備された際に県道の付け替えが行われ、大塚から中津交差点までの間が廃道となりました。

図表:2万5千分の1地形図・昭和29年の春日台付近
 宅地開発される前、昭和30年ごろの地形図を見ると現在の春日台地区のほぼ中央を旧道が通り抜けていたのが判ります。
 住宅地となる前はこの辺り一帯は桑畑だったそうで、桑の葉が生い茂る頃には両側の桑畑から伸びた枝葉が道に覆いかぶさるほどだったと云われています。
 ちなみに宅地開発後、住居表示が施行された際につけられた大字「春日台」という名は、この一帯で生産されていた桑の品種“春日”が由来になったとのこと。

写真:春日台地区内旧道①  
写真:春日台地区内旧道②
 春日台を過ぎ、再び中津となるところから旧道の道すじが戻ります。

写真:中津交差点の旧式案内標識
 旧道は現道や横須賀水道みちと交差する中津交差点へとたどり着きます。
 これまで旧道らしき痕跡はほとんどありませんでしたが、この中津交差点で旧式の案内標識を見ることができました。
 この道が県道であったころは、右方向・北へと進む県道65号線は三増トンネルが開通しておらず、自動車では三増地域までしか立ち入ることができませんでした。このため、目的地が三増を指しています。
 旧道のルートとなる直進の道すじの目的地にある「小野」は厚木市小野となります。

熊坂
写真:中津交差点①  
写真:中津交差点②
 現道と交差する中津交差点の東側、旧式の案内標識がある辺りには厚木と中津を結ぶ路線バスの車庫が昭和初期までありました。そのため、このあたりは「車庫」と呼ばれています。

図表:2万5千分の1地形図・昭和29年の大塚付近
 このあたりは旧中津村の中心地で、昭和30年ごろの地形図でも見てとれる郵便局の他に中津村役場などが旧県道沿いにありました。

写真:中津地区内旧道①
 中津交差点から中津原台地の西の縁までは家々の間の道をクランク状に進んでいきます。

写真:クランク上の道すじ  
図表:クランク地点の交差点の状況
 旧道ルートに沿って愛川町道の指定がされているところもあり、直進方向の道すじでなく県道旧道であった左方の道すじが優先道路となっている箇所も残されていました。

写真:中津往還案内標識
 クランク区間が終わり中津原台地の縁を坂本方面へ進む旧道、この区間は「中津往還」とも呼ばれているそうです。

半縄
写真:道端に立つ神奈川県旧式道界標 写真:引き抜かれた神奈川県旧式道界標
 中津交差点から坂本坂上は中津交差点~大塚よりも県道解除は遅く、昭和40年代までは県道に指定されていたようです。
 そのためか、この辺りには“神”と刻まれた神奈川県の道界標が残されていました。

写真:半縄の辻
 一旦、別のルートを辿っていた八王子通大山道はこの半縄の辻で再び合流します。

写真:現県道との合流点
 坂本坂上の現道との合流点。
 頭上を通るのは旧陸軍中津飛行場が建設されたのにあわせて作られた排水用水路橋です。

〔 参考文献 〕
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