道しるべが指す昭和初期の麻溝
八景の道標
道標のある周辺

道標のあるこの辺りは旧来より八景の棚と呼ばれ、河岸段丘の崖上から相模川や丹沢山系が一望でき昭和初期には名勝旧蹟四十五佳撰にも選ばれる風光明媚な場所として知られていました。
この八景を南北に通る県道46号線は旧来“八王子道”と呼ばれ、県央と八王子とを結んでいましたが、この辺りの道すじを特に“はけ通り”と呼んでいます。


道標の様子

「南 新磯 座間 厚木町ニ至ル 建設地 字 八景」
八王子道沿いに新磯や座間を経由し、途中より合流した矢倉沢往還(青山通大山道)とともに相模川を渡ると厚木の街へとたどり着くこととなります。

「北 溝村、橋本駅、八王子方面ヘ至ル」
道標設置の2年後、大正15年に上溝町へと昇格を果たす溝村の南で当麻周り八王子通大山道と合流した道すじは、橋本を経て八王子へと向かいます。

「東 大野村 木曽、原町田方面」
この道を東北へと進むと、県立相模原公園のそばを通る山の神坂へとたどり着きます。
この坂のふもとには昔、原町田(現在の町田駅周辺)と木曽(現在の町田市木曽西)との分かれ道があり、どちらも旧・大野村(大沼・古淵、若松・鵜野森)を経てそれぞれの行先に到達することとなります。

「御成婚記念 大正十三年一月二十六日 麻溝村青年團第一支部北部正風・・・」
昭和天皇が結婚された記念であることが刻まれており、婚儀を行った当日に建てられたようです。
また、麻溝村の青年団のうちでも、特に北部地域の人々がこの道標の設置に関わったことが読み取れます。
昭和3年当時の地形図より

昭和初期の地形図を見てみると、ちょうど道標のある箇所が「へ」の字になっており、八王子道の旧道であることが読み取ることができます。
字名として道標にも刻まれている“ハケ”の地名ですが、地形図上では「八景」ではなく「垰」という字が充てられています。