Little things of the guide

福島社長の自伝より


 福島社長の自伝「鋳掛屋の天秤棒」には、この当時のエピソードが書かれてます。

 福島社長が外出していたとき、自宅に差し押さえのため執行吏が来たそうです。
 対応に出た福島夫人に執行吏は「手形の不渡りのため、動産の差し押さえ行います。但し、奥さんのものは差し押さえませんから、ご安心ください」と言いました。
 しかし、夫人は福島社長が金策に苦労していることを知っていたので、何のためらいもなく嵌めていた2カラットのダイヤモンドの指輪を抜いて執行吏に「これを持っていったらどうなの」と差し出します。
 これに驚いたのは当の執行吏。手形の不渡り額は当時の金額で数千円程度、このダイヤの指輪を捨値で売り払っても、ゆうにお釣りがきます。
 「こんな高価なものを出すことはありませんよ。あんたのような奥さんにお目にかかったことがありません。よろしいです、とにかく役目ですから差し押さえていきますが、その指輪一つ売ればタンとお釣りがきます。競売まで時間がありますから、ご主人がお帰りになったら、よくご相談なすってください。どうもお邪魔しました。」
 と、言って帰っていきました。

 この話しを聞いた福島社長も驚きます。
 夫人が差し出したダイヤは、娘のためにと夫人の父親が買ったもの。「売りましょう」と言う夫人をなだめて、なんとか支払うお金を準備してダイヤを売らずに済ましたそうです。

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